ジュリアン・ドール
「えっ?!」と、ミサが意味も分からぬまま聞き返した。

ふと、フロアーを見ていたジョウがハーリーに振り向いた時、ハーリーはじっとジョウを直視していた。


初めて会った人に穴が開くように見つめられるのは、あまり良い気がしない。ジョウは、怪訝な顔でハーリーに話しかけた。

「なにか･････？」



（そうだ！忘れるはずがない。この黒髪、黒い眸の娘、可愛い私の妹。そして、彼女が犯した罪に縛られた運命の相手。今生ではサバドリアンの血を引いているだろう、髪と眸は栗色だが、この顔を･････！）



ハーリーに振り向いた青年の顔は、ハーリーが確信していた通りの、懐かしい、かつての無二の親友のものと重なった。


ハーリーは、遠い過去をすっかり思い出していた。


「どうしたの、ハーリー?!･････ジョウがどうかしたの？」


ミサは、ジョウを見るハーリーを、訝しげに見つめた。


それから、ハーリーは答えた。


「いいえ･････、ただ、わたくし達は、遠い昔に顔を合わせている･････。と、そう思っただけです。お嬢さんと、この彼と･････」

「遠い昔って･････、その、前世のこと？」

「そうです。」


二人の会話を聞いて、ジョウは何のことか、さっぱり分からずに話に参加した。


「前世･････？」

「そうよ、ジョウ。ハーリーは人の運命を見ることが出来るんですって！･････ハーリー、もっと詳しく教えて！」


ミサは、カウンターテーブルに身を乗り出してハーリーに尋くが、ハーリーは首を横に振りながら、優しい眸でミサを見つめて、それから先は話したくはない、と･････、その眸が語っていた。


「何も知らない方がいいことも、時にはあるんだよ」

「なぜ？前世なんて素敵じゃない。知りたいわ。私達はいったいどこで会ってたの？」


ミサは嬉しそうに闇色の眸を輝かせ、ハーリーに尋ねている。

ジョウは二人の会話のやり取りを唯聞いているだけだったが、人見知りのせいか、眸を合わせることが、ミサには、ジョウがハーリーを睨みつけているように見えてしまう鋭い目つきをジョウはしていた。
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