ジュリアン・ドール
「会ったのはここさ。お嬢さんは今と同じ美しい黒髪の素敵なレディー。彼は君のだんな様になった。周りの貴婦人達には大変評判の良い貴公子だった」


ハーリーの話にミサは感動したらしく、「素敵・・・・・。では、私達はまるで出会うべくして生まれて来たようね。」と、すっかり喜んでいる。


喜びを遮ったのはジョウの言葉だった。


「前世なんて、信じられないね。」

「ジョウ。何てこと言うの!折角ハーリーが教えてくれているのに」


ミサはジョウを抗議した。


「俺は前世の自分に縛られて君を選んだんじゃない。運命に自分を動かされているつもりもない。自分の運命は自分の意志で決めているんだ。・・・・・いつでも!」


ジョウは、つい我を忘れていた。


「それは、そうだと思うけど、でも・・・・・少しくらい信じたって・・・・・」


ミサが感情的になるジョウにいじけた口調で返す。


「じゃあ君は?君は、自分の意思でオレを選んでくれたのではないのか?」とジョウは、なおも感情的になる。


「まあまあ・・・・・、落ち着いて下さい。こんなことをお話したわたくしが悪かったんです。申し訳ありません」


ハーリーは、感情的になったジョウをなだめるように、落ち着いた口調のまま、二人の間に割り込んだ。


「貴方はどうやら、自分のことを、こうだと決めつけられるのが嫌なのでしょう?」


ハーリーは、ジョウの性格をすぐに見抜いていた。


「あ、ああ・・・・・まあね」


ジョウは、頷いた。そしてハーリーはこうも言った。

「ならば未来のことを言いましょう。貴方には、これから二つの道が用意されています。どちらの道を選ぶか、自分の意思で決める時が来るはず。たぶん近い未来に・・・・・。

貴方がどちらの答を出すかは、なぜだか私にはわかりません。それからお嬢さん、貴方にはこれから大切な人との別れが迫っているかもしれないですね。しかし、もっと素晴らしい出会いも待っているでしょう」と。


ミサは、父親との別れが迫っていることなど、まだ何も話してはいなかった。
< 56 / 155 >

この作品をシェア

pagetop