ジュリアン・ドール
愛しい恋人の、いつもは優しい愛を囁く声が、まるで知らない男の冷たい声となって、娘の脳裏に響き、その声は何度も繰り返し、繰り返し、手紙の文字をたどっている。
『君とは、もう会いたくない。もう私の前に姿を見せないでくれ。・・・・・君とは、もう会いたくない・・・・・会いたくない!』
「いや~っ!やめてっ、ローレン!!」
娘は悲痛な叫びを上げ、両手で頭を抱え込むように耳を押さえた。
ソ-プリリアの花束が、支える腕を失い足下に落ちて行く。
その声を遮ろうと耳を塞いでも、全く無意味に、恋人の声は、冷たく響いて止まない。
娘は叫び続けた。
『お願いやめて、ローレン! 笑って、嘘だと言って・・・・・。いつものように愛してると言って・・・・・。私が貴方の前に現れたなら、全てが悪夢であったように、私を抱き締めて!』
両手を耳に当てながら、頭の中に響く、裏切りの声を掻き消すように、娘は虚空に向かって声にならない声で叫び続けていた。それが聞こえなくなるまで。
しばらくして気が付くと、娘は膝を落とし蹲っている自分に気付いた。何かに怯えるように。
ゆっくりと顔を上げ辺りを見回すと、何も無かったように、鬱蒼と茂った草木が娘を囲んでいる。
天上には、黒い樹々の間に、星空が見えていた。
そう・・・・・。夜空は晴れ渡っていることを、山道の中、暗影に包まれているせいか、すっかり忘れていた。そのくせ、風だけはやけに冷たく鋭利な刃物のように、容赦なくこの身に切りかかってくる。
『君とは、もう会いたくない。もう私の前に姿を見せないでくれ。・・・・・君とは、もう会いたくない・・・・・会いたくない!』
「いや~っ!やめてっ、ローレン!!」
娘は悲痛な叫びを上げ、両手で頭を抱え込むように耳を押さえた。
ソ-プリリアの花束が、支える腕を失い足下に落ちて行く。
その声を遮ろうと耳を塞いでも、全く無意味に、恋人の声は、冷たく響いて止まない。
娘は叫び続けた。
『お願いやめて、ローレン! 笑って、嘘だと言って・・・・・。いつものように愛してると言って・・・・・。私が貴方の前に現れたなら、全てが悪夢であったように、私を抱き締めて!』
両手を耳に当てながら、頭の中に響く、裏切りの声を掻き消すように、娘は虚空に向かって声にならない声で叫び続けていた。それが聞こえなくなるまで。
しばらくして気が付くと、娘は膝を落とし蹲っている自分に気付いた。何かに怯えるように。
ゆっくりと顔を上げ辺りを見回すと、何も無かったように、鬱蒼と茂った草木が娘を囲んでいる。
天上には、黒い樹々の間に、星空が見えていた。
そう・・・・・。夜空は晴れ渡っていることを、山道の中、暗影に包まれているせいか、すっかり忘れていた。そのくせ、風だけはやけに冷たく鋭利な刃物のように、容赦なくこの身に切りかかってくる。