ジュリアン・ドール
「こいつ・・・・・気でも狂ったのか?何を言っている?」


後ろの男が、娘を馬鹿にして言う。



「そして、私を陵辱しようと、ほんの指一本でもこの肌に触れ、私を汚そうとするなら、どういう目にあうのか思い知るがいい」



娘は変わらず、声にも笑みを交えながら、目の前を鋭く睨み付け、まるで独り言のように呟いていた。


それを聞き、野獣はその汚い手の中の、娘の柔らかく豊潤で精密な乳白の肌の乳房を、一層暴満に揉んでみせた。


「面白い。さて、どうなるのか教えてもらおうじゃないか?」



野獣は、なおも娘を嘲けながら乱暴に愛撫を続けた。そして、乳房を攫む汚れた手の指先が、ついに神経の集中する先端に達した時、娘の深い碧色の双眸が、刹那、キラリと光りを見せた気がした。


怒りに狂い、娘が、胸の奥で叫ぶ。



『もう、許さない・・・・・!』



その瞬間!


遥か天上で、闇を引き裂くかのように稲妻が起こり、辺りを照らした。


刹那、雷光に照らされた、娘の貌が野獣の瞼の裏に焼きつく。


大きく目を見開き、視線だけで心臓を射抜き、命をも奪ってしまいそうな迫真に満ちた、鋭く恐ろしい視線。


暗闇の中、眼光だけがその闇に浮かんでいる気がした。それほどに鋭い、夜行性の肉食獣が獲物をその目に捕らえたような視線だった。まるで人間の眼ではない。その眼も、その表情も・・・・・・。


娘を嘲笑っていた筈の野獣は、知らずのうちに娘の迫力に圧倒され、乳白の肌からその汚い手を離していた。


恐れの余り、固唾を飲んで身を縮めながら、いつの間にか後ずさっている。


その野獣のような大男と向かい合う、後ろから娘を抑えつけた男は、相棒の、蒼白の貌で言葉をなくしている様子に気付き、腕の力を弛めた。


その隙に!娘は男の腕から逃れ、二人の男を目の前にした。

「愚か者よ、地獄の縁を彷徨うがいい!そして、苦しみの果てに恐怖の底に絶叫するがいい。もはや驚愕の表情以外に、お前たちの顔を飾る事はない!!フッ・・・・・思い知るがいい!」
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