ジュリアン・ドール
「わ、私・・・・・、今、今来たばかりよ。ごめんね?約束の時間より遅れちゃったわね」
ジョウは、先程まで見ていた、人形を飾っている戸棚の横に掛けられている、針が逆回りで動く柱時計に目をやった。
ミサはその正面の壁一面に張りつけられた鏡越しにその時計を見る。
その時計は珍しい作りをしていて、鏡に映ると正規の時計を見る事の出来る作りになっている。
それを見慣れぬミサは、やはり鏡に映った時計を見るが、幼い頃からそれを見慣れたジョウは、直接時計に目を向け、時間を読んだ。
時計の針は“夕の来の刻”を指していた。
今日は、月に一度の恒例の“食事会の日”。
場所はベルシナの会員制と言う珍しいシステムの“舞踏会”という名のレストラン。
食事の時間に間に合うように、いつもミサは馬車で彼を迎えに来ているのだが、約束の時間は“陽の中の刻”だった。
ミサは約束にはル-ズではない。むしろ待たせるのは嫌いな性格で、約束の時間には、きちんと着ていたのだろうと、ミサのまるで隠しきれていない動揺した態度でわかる。
ミサがいるのにもかかわらず、ジョウは時の流れを忘れていた。
ジョウが頭に描く空想の世界を壊さぬよう、彼の意識が現実に向けられるまで、気長に待ち続け、やっとミサの存在に気付いた彼に、けなげに笑顔を曇らせることなく見せてくれるそのいじらしさに、ジョウは胸を痛めた。
「ごめん、かなり待たせちゃったみたいだ。あと少しだけ時間をくれるかな・・・・・?」
そう言いながらも、ジョウは、既に、紙の上にペンを走らせていた。
「急いで終わらせるから・・・・・」
ミサは笑ったまま頷いて、再び作業を始めるジョウを、今度は安心してじっと見つめていた。
ジョウは、先程まで見ていた、人形を飾っている戸棚の横に掛けられている、針が逆回りで動く柱時計に目をやった。
ミサはその正面の壁一面に張りつけられた鏡越しにその時計を見る。
その時計は珍しい作りをしていて、鏡に映ると正規の時計を見る事の出来る作りになっている。
それを見慣れぬミサは、やはり鏡に映った時計を見るが、幼い頃からそれを見慣れたジョウは、直接時計に目を向け、時間を読んだ。
時計の針は“夕の来の刻”を指していた。
今日は、月に一度の恒例の“食事会の日”。
場所はベルシナの会員制と言う珍しいシステムの“舞踏会”という名のレストラン。
食事の時間に間に合うように、いつもミサは馬車で彼を迎えに来ているのだが、約束の時間は“陽の中の刻”だった。
ミサは約束にはル-ズではない。むしろ待たせるのは嫌いな性格で、約束の時間には、きちんと着ていたのだろうと、ミサのまるで隠しきれていない動揺した態度でわかる。
ミサがいるのにもかかわらず、ジョウは時の流れを忘れていた。
ジョウが頭に描く空想の世界を壊さぬよう、彼の意識が現実に向けられるまで、気長に待ち続け、やっとミサの存在に気付いた彼に、けなげに笑顔を曇らせることなく見せてくれるそのいじらしさに、ジョウは胸を痛めた。
「ごめん、かなり待たせちゃったみたいだ。あと少しだけ時間をくれるかな・・・・・?」
そう言いながらも、ジョウは、既に、紙の上にペンを走らせていた。
「急いで終わらせるから・・・・・」
ミサは笑ったまま頷いて、再び作業を始めるジョウを、今度は安心してじっと見つめていた。