ジュリアン・ドール
「私・・・・・、私は、長い間眠っていたの?いつの間にか私は歳をとって、気が付いたら、愛しい人は隣にいない。いつから記憶がないのかしら?ねぇ、ハーリー!鏡を見せて。私はもう、幾つ歳をとっているの?私の顔は・・・・・」


「ジュリアン!」


ハーリーは、手を休め、混乱する娘の名を言葉で制した。

手元を見たまま・・・。そして再び、手当てを始めながら答えた。


「落ち着くんだ。・・・・・あれからどれくらいの時が経ったのか分からない。しかし、そんなに時間は経っていないのかも知れない。安心しなさい。君は変わらず若くて美しい」

「・・・・・」

「私はね、この状況をどのように説明していいのか分からないんだよ。無責任かも知れないが、ゆっくりと時間をかけて、自分が置かれた状況を把握して欲しい」


娘は、冷静さを取り戻して話を聞いていた。


「さあ、これでよし!もう、大丈夫だ。」



手当ては済み、ハーリーは、後片づけをしながら話しかけていた。


「ありがとう。ハーリー」

「気に病むことはない。可愛い妹の為だ、当たり前のことだろう」



しかし、先程からハーリーは一度もこちらを向いてくれない。娘にはハーリーが意識的にこちらを見ないようにしているように思えた。



「ハーリー、なぜこっちを向いてくれないの?どうかしたの?」


娘が、不安げな表情で質問した。


「ジュリアン、気付いていないのかい?いくら腹違いの兄妹と言う間柄だろうが、君はレディーだからね。いつまでも素肌を晒らしているなんて……。起き上がることができるなら、枕元にブラウスが置いてあるから、それを着なさい。今すぐにね」



それを聞いて、初めて娘は、自分が裸なのに気がついた。


「きゃっ!・・・・いやっ!わ、私ったら、なんて恥ずかしい!・・・ハーリーが?」


娘は慌て羞らい、寝具に身体を隠した。


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