君のために

背広に袖を通して家を出る。


駅までは約15分。

毎日同じことを考えながら歩く。


―――あの日。


『今日、いつもの場所で待ってるからね。』


彼女からのメールに気づいて返信したのに、

…したのにもかかわらず

俺はその約束をすっぽかしてしまった。


いや、急に仕事が入ったんだから仕方がなかった。


愛花からは何度も着信が入っていたが、出られなかった。

仕事を終えて、いつもの場所に向かいながら
電話をかける。


『…もしもし』


「電話に出れなくてごめん。急に仕事が入ったんだ。」


『そっか…つばさ。今日何の日か分かる??』


今日??

愛花の誕生日??

いや、今日じゃない。

もちろん俺の誕生日でもない。


じゃあ、何の日??


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