恋心
「っしゃ、オッケー。多分これで大丈夫。多分ね」
そう言って立ち上がると、少し足が痺れたのかよろけてしまった。
「大丈夫?…ですか!?」
「あ、全然大丈夫」
「あの、ありがとう、これ、手汚れちゃったんで使って…下さい」
彼女はそう言うと、ピンク色の可愛いハンドタオルを俺に差し出した。
「大丈夫。持ってるから」
俺はそう言うと、道路にひょいっと手を出して、土砂降りの雨で手についた汚れた錆びを洗うように流した。
そして、ポケットからハンカチを取り出し丁寧に手を拭いていると、何故か隣で彼女が笑った。
「何?」
「いや、ハンカチ持ってるんだなーと思っ、いまして。意外っていうか…です」
「ハンカチくらい持ってるだろ。つーかその変な敬語やめてくれる?」
俺がそう言うと、彼女はまた笑った。
「そうだね、同級生だしね」
「ん」
「っていうか、雨…すごいね」
「んー」
ザーザー降りしきる雨が、さっきよりもさらに強くなっていた。
学校までもうすぐってとこで、雨宿り状態。
ついてねえわ、今日は。