恋心



授業が終わると、すぐに立ち上がった。


春ちゃんの席に、真っ直ぐ向かった。



「春ちゃ…」


「久保さん!」


だけど後ろから春ちゃんに声を掛けた瞬間、同時に声が重なる。


ナミちゃんだった。



「ねぇ、久保さん。さっき大雅と一緒に来たの?」



春ちゃんの机の前に立ち、ナミちゃんはじーっと春ちゃんを見下ろした。


それを後ろから見ていたあたしは、黙ったまま突っ立っているしかなくて。


「えっ、あ…一緒に来たっていうか…途中で一緒になって…」



聞きながら、頭で理解しようとする。



「途中?何で?久保さんと大雅、別に接点とかないよね?」

「あ、うん。ないんだけど…あの、自転車のね、チェーンが外れて」


「自転車のチェーン?」


「うん、それで清原くんが偶然通りかかって直してくれたの、チェーンを」


「あっ!そうなんだー!?そっかそっか、そうなんだ」



ムッとしていたナミちゃんの表情が、みるみるうちに和らいでいく。


そしてあたしも。

それを聞いて何だかホッとしていた。










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