恋心
「うわー、超すげーじゃん!」
「レベルMAXだからな」
目の前にいる歩夢とテツは、あいつの名前が聞こえたことも全く気付いていないようで。
俺は一人、椅子の背もたれに体を預けながら、聞くつもりはなくても聞こえてくる会話をジッと聞いていた。
「そうそう、駅の近くのカラオケでバイトしててさ、この間偶然会ったんだ。こいつ全く気付いてなかったけど」
「マジかー。全然気付かなかったわ。今聞いてビックリしたもん。だって超可愛くなってたじゃん」
「だよな、垢抜けてたよマジで」
一体こいつらはあいつの何なんだろう。
久しぶりに会ったっぽいけど…
アイスティーを飲みながら、意識を別の方に向けようと盛り上がる歩夢たちを見ていた。
「でさ、また連絡取ってんだよね」
「え?マジで?あんなことしといて」
「修二マジ鬼畜すぎ」
「まぁまぁそう言うなって。でもさ、カラオケで会った時は超警戒してる感じでそそくさ逃げてったんだけど、メールしてみたらすぐ返してきて」
「釣り早過ぎじゃん」
釣り…?
「ま、あんなに可愛くなってるならもう一回くらいつまんでやろうかな、みたいな?そうだろ修二」
「ハハッ、まぁな」
もう一回くらい…
つまむ…
その瞬間、繋がった。
シュウジ…シュウ…ジ。
こいつもしかして…
そうだ、あの永瀬修二だ。