恋心
音が止むと、近くで遊んでいた子供たちは、あの夕焼けこやけを聴いたからか、ポツリポツリと帰っていく。
さっきよりも、静かになった公園。
「っていうかさー」
そしたらいきなり、隣に座る相原が口を開いた。
「ん?」
「自分も遊び人のくせに」
「はっ?」
「本気の女相手に遊びはタチ悪いっすよー、とか言っちゃって」
相原はそう言うとクスっと笑う。
そしてーーー
「あんた何で知ってたの?カラオケで会ったこととかメール…のこととか。あたし春ちゃんにも話してなかったのに」
ポツンと小さな声でそう言った。
「あー、偶然な。昨日永瀬たちが話してる会話聞いて」
「えっ、盗み聞き!?タチ悪ーっ!」
「ちげーよ、別に聞きたくもないのに真後ろにいたから聞こえてきたんだっつーの」
「へぇーっ…そっか…」
また少し、間が空く。
変な気分だった。
「つまみ喰いとかヒドイよねー。食べ物じゃないんだからさー」
「んー」
「危うくまた騙されるとこだったよ…」
「……」
掠れるような、切ない声。
何て言葉を返せばいいのか分からなかった。
「バカだよねー、同じ相手に二回も引っかかってさ。同じ失敗しそうだったなんて。バカだよ本当…」
「……そうだな」
「えっ?」
「バカだ、バカ。お前は生粋のバカだ」
「あっ、あんたに言われると超むかつくんだけど」
「ハハッ、何だよそれ」
「ハハッ、あんたにだけは言われたくないってこと」
不思議な感覚だった。
ひっぱたかれたことも、避けられていたことも一瞬忘れてた。
俺たちは笑っていて。
だけど、そんな緩やかに流れる時間は、すげー心地良くて。
なんかすげー、いい気分だった。