恋心
「つーか、そろそろ帰るか」
蚊に噛まれた数とか数えたりして。
どっちが多いとかそんなことでひとしきり笑った頃。
まだ明るい空の下、隣で清原がそう言いながら立ち上がった。
公園に立っている丸い時計。
ふとそれに目を向けると、長い針と短い針が真っ直ぐに繋がっていた。
6時。
そっか、シンデレラ…ボーイだっけ。
勝手に事情を知ってしまっていたあたしは、何となく口を開いた。
「ま、まだ早くない?6時だよ」
そう聞くと、清原は変わらない顔色で答える。
「お前みたいにヒマじゃねーからな」
その言葉を聞いて、キュッと痛む胸。
「えっ、あんた何かやることあんの?」
もしかしたら話してくれるかも…なんて、そんなことを思いながら返した言葉。
「ん?別に」
だけど、清原はそう答えた。
そうだよね、あたしなんかに話すわけないよね…家の事情なんて。
「ふーん…そっか」
「つーかお前自転車は?」
「あっ、学校にとめたまま」
そう答えると、清原は自分の自転車まで歩いていって。
少し離れたその場所で自転車にまたがると、ぶっきらぼうに言った。
「すぐそこだけど乗ってけよ」