恋心



「なっちゃんと同い年なの?」


「……」



何なの?


この人は。


何でそんなこと聞かれて、答えなきゃいけないのよ。



「生意気だったよな、マジ。イライラするわあーいう奴」



吐き捨てるようにそう言った先輩。


その瞬間、抑えていたものが一気に溢れだした。




「自分のこと棚にあげて…」


「えっ?」


「最低…」



深くさしていた傘をグッと上げ、先輩の顔を真っ直ぐに見た。




「あたし、本気だったんです」


「えっ?」


「本気で先輩のこと…好きで好きで」


「なっちゃん…」


「だから…あんなフラれ方したのに…メールくれた時、本当に嬉しくて」


「じゃあ、もう一回俺とさ。あっ、あいつが言ってたことマジで意味分かんねーし。俺あんなこと言ってないから」



先輩はそう言うと、一歩二歩と近付いてきて。


傘を持つあたしの左手をそっと握った。


あたしは…
こんな人のどこが好きだったんだろう。



あんなに泣くぐらい。

引きずるくらい、どうしてこの人のことが好きだったんだろう。



ハァッとため息が出て、口を開いた。


「あたし、もう騙されませ」


「あっ」



言いかけた言葉と同時に、先輩の声が重なる。


そして、バツが悪そうな先輩の顔に、先輩の視線の先を辿った。


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