恋心
うそっ…
先輩に握られていた左手を、思わずふりほどいた。
そこにいたのは、自転車にまたがった清原と…大江歩夢とテツヤ君。
そしてーーー
「ハハッ、おもしれー」
目と目が合った瞬間、清原は高らかに笑った。
「行くぞー」
そして、そう言うとすぐに走り出していく。
点滅する信号は、清原たちが渡っているうちに赤信号へと変わる。
「違っ…」
車の音に掻き消されていく声。
違うよ。
勘違いしないでよ。
なんだと思ったの?
おもしろいって何?
ドキドキと早くなる心臓の音。
と同時に、ぎゅっと胸が痛んだ。
「なんだあいつ」
「……」
隣に立つ先輩の言葉に、キュッと唇を噛み締めた。
「……っていうか」
「えっ?」
「好きだったのは先輩の顔だけです。中身知ったら最低過ぎて冷めてました。それに…」
「な、なんだよ」
「エッチも、思ってたより全然うまくなかったし」
あたしはそう言うと、信号が青に変わったのを見てすぐに走り出した。