恋心
そこにいたのは大江歩夢で。
その後ろからは三浦さんとテツヤ君も自転車を押しながら歩いてきていた。
「あのさ、この前の話なんだけど」
珍しく真面目な顔の大江歩夢。
「えっ?この前?」
「あの、中庭のベンチで俺ら三人でいた時夏美ちゃん達来たじゃん」
その言葉に、思い出したくもないあの時のことがまた頭に浮かんだ。
「あれさ、違うから」
えっ?
違う?
「こんなこと勝手に喋ったら多分あいつすげー怒るかもしれないけど」
なっ…何?
怒る?
「あいつさ、夏美ちゃんが交差点であの男といるのを見た時、すっげー怒ってて」
交差点…あの男…
先輩のこと?
「何かめちゃくちゃイライラしててさ。次の日いきなりテツにコンパセッティングしろとか言って。あいつの口からそういう言葉聞いたことなかったからビックリしたんだよ俺らも」
「…うん」
「だから何つーか…むしゃくしゃしてたと思うんだ、大雅。夏美ちゃんとあの男のことでむしゃくしゃしてて、ついあんなこと言っちゃったと思うっていうか」
あたしと先輩のことでむしゃくしゃ…?
どうして?
「でもあいつ、変わったんだよ?」
「えっ?」
「いや、ぶっちゃけカラオケコンパはしたけど」
「はっ⁉カラオケコンパ⁉」
大江歩夢の言葉に、三浦さんが反応する。
「いや、違うんだって。俺は監視役のつもりで」
「何が監視役よ?バカじゃない!?」
「だから後で説明するってその話は」
痴話喧嘩を始めた二人の隣から、テツヤ君が呆れ顔でひょこっと出てきて口を開く。
「結局コンパはしたんだよ。でさ、何だかんだで大雅は女の子と二人でカラオケから先に帰っちゃって。そのまま家に連れて帰ったらしいんだ」
「ふ、ふーん…」
言いながら、やっぱり…って思った。
やっぱり平気で女の子を家に連れて帰ったりするんだって思った。
すごく痛かった。
胸がギューーッて。締め付けられるような感じがした。