恋心
「夏美ちゃんと関わるようになって、大雅ちょっと変わったんだ」
「あたっ…し?」
「俺もそう思う」
「私も…何かそんな気がする」
気付いたら大江歩夢達の痴話喧嘩は終わっていて、三人がジッとあたしの言葉を待つように見ていた。
「……っていうか…」
「うん」
「さっきの女の人…三浦さんが前に話してた、小さい時に出て行ったとかいうあいつのお母さんだよね?」
「えっ、何で分かったの?」
三浦さんが気まずそうに答えてくれた。
やっぱり…
「顔がすごく似てたから。もしかしたらって思ったけど…そうなんだ、やっぱりそうだったんだ」
もしかしたら、が確信に変わって。
そしたら、抑えていた何かが溢れて止まらなくなった。
「あいつのお母さんって、よくあんな風に会いに来たりするの?」
「いや…多分…初めて。大雅もかなり驚いてたから…」
「何しに来たの?あの人」
「分かんないんだ、私達にも。大雅、先に帰っててくれって言って一緒に歩いていっちゃったから」
ってことは?
いきなり現れたってことだよね?
何のために?
どうして?
「ちょっ、夏美!!」
走り出していた。
気付いたら、走り出してしまっていた。
あいつが歩いて行った方へ向かって、全速力でペダルを漕いだ。