恋心
望まなかった再会ーTaiga
降り出してきた雨に、ふと空を見上げた。
黒い雲が、明るかった空を覆っていく。
まるで、今の俺の心ん中みたいだ。
いつものように学校から帰ろうとして、いつものようにくだらない話をして笑ってて。
いつものように…
「ずいぶんおとなしいのね」
「……」
バス停の下で、濡れた腕や肩をハンカチで拭きながら、目の前にいるこの人は薄っすら笑みを浮かべる。
「10年ぶりに会ったんだからもっと喜ぶかと思ったのに。ま、若菜も大雅と同じように驚いてたけど」
若菜も…?
「若菜に会ったのか!」
「何よ怖い顔して」
「会ったのかって聞いてんだよ!」
響き渡った俺の大きな声に、通行人達が何事かとチラチラ見ている。
「ちょっと大雅、落ちついてよ」
何言ってんだこいつ。
落ちつけ?
「あんたの学校くる前に若菜の中学にも寄ってきたのよ」
「何のためにだよ!いきなり現れて……若菜の気持ち考えろよ!!」
抑えきれなかった。
怒りが最高潮に達して、周りなんてまるで見えなかった。
「でも若菜はそんな風に怒らなかったわよ?」
「えっ…」
「泣いてた、あの子は」
その言葉を聞いた瞬間、俺は冷静さを失った。
勢いよく掴みかかって、胸ぐらをつかんだ。