恋心
「金なんてない。あったとしても…テメーなんかに渡す金はない」
吐き捨てるようにそう言った俺は、その場から立ち去ろうとした。
だけど、次の瞬間ーーー
「じゃあ…お父さんに頼んでくれない?」
背後から聞こえてきた声に、俺の頭の中で何かがプツンと弾けた。
「親父に頼め?」
「うん、お願いできない?」
「親父が…親父がどれだけ苦労したと思ってんだよ……俺や若菜が…どれだけ……ふざけたことばっかぬかしてんじゃねーよっ!」
振り返った俺は、勢いよく掴みかかり、握りしめた拳で二発三発と頬や肩を力一杯殴りつけた。
「やめてっ…」
もう一度拳を振り上げて、ゆっくりと見下ろした。
「やめて…お願い…」
怯えたような顔で俺を見上げている。
でも…許せない。
こいつだけは、絶対。
「やめてだと?親父の気持ち…若菜の気持ち…俺の気持ちを何だったと思ってんだよ!」
また勢いよく拳を振り下ろした…はずだった。
「ダメー!」
だけど、温かい手が冷たい俺の拳を掴んでいて。
「清原ダメ!暴力はダメだって!」
その温かい手を辿ると、そこには相原がいた。