恋心
「離せよ」
「やだ!離さない!」
「離せって言ってんだろ!」
「やだ!絶対離さない!ダメだよ…殴っても何も変わらないよ?痛いじゃん、殴るあんたの手も…っ…っ…」
何言ってんだよこいつ。
つーか何で泣いてんだよお前が。
「帰って下さい…」
えっ?
「早く帰って下さい!」
相原は俺の手を掴んだまま、目の前にいるその人に叫ぶように言った。
そしてーーー
「もう二度と現れたりしないで下さい…っ…傷つけるためだけに現れないで…下さい…」
泣きながら、何度もそんな言葉を並べていく。
「わっ、分かったわよ!もういいわよ!私が野たれ死んだら恨んでやるから!」
吐き捨てるようにそう言うと、逃げるように早足で歩いていく。
「野たれ死んだら恨んでやる?じゃあさっさとくたばれババア!」
俺は叫ぶような大声でその情けない後ろ姿を見送った。