恋心
「つーか、いい加減離してくんねーかな」
まだ強く掴まれたままの手を軽く動かすと、我に返ったように相原はパッと手を離した。
「ごっ、ごめん…」
「何がだよ」
「…うん…いろいろ…」
「何だよいろいろって」
俯きながら指先で涙を拭う姿を見て、何だか可笑しくてふっと笑ってしまった。
「てかお前、何でいんの?訳わかんねーし」
「うん…あたしも…何でなのか訳わかんない」
「ハハッ、何だよそれ。つーか…」
広がったまま地面に転がっていた傘を見つけ、そっとそれを拾った。
「濡れるぞ?ほらっ」
そして相原の手に傘を掴ませると、俺達の手はまた少し触れた。