恋心



「まぁでも、もしも仮にさ。ずっとあんな女に育てられてたら…育ちが悪いどころか腐って育たなかっただろうし。出て行ってくれて良かったって今は思う」



俺がそう言うと、相原は隣でコクンと頷いた。



「ま、不便なこともいっぱいあったけどな」



そう言うと、またゆっくり頷いて。



「おかげで料理超うまくなったし」


「うん…っ…」


俺がまた言うと、相原は泣きながら何度も頷いていた。


だから何でこいつが泣くんだよ。



「つーか、帰るぞそろそろ」


「…んっ…」


「中学ん時からさ、6時のシンデレラボーイとか言われてたんだよ俺」


「うん」


「親父は仕事で遅いし、若菜にやらせてみても全く料理にセンスねえし。だから俺が6時には帰って晩飯の用意するんだ。だから6時のシンデレラボーイ、ウケるだろ?」


「ううん…ウケない」


「ハハッウケろっつーの」


「かっこいいよ、清原」



相原はそう言うと、涙目で俺に傘を差し出した。

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