恋心
不器用だけどーTaiga
目が覚めたら真っ暗で。
ひょっとしたら夢を見ていたのかと思った。
だけど、おでこにはタオルが乗せられていて。
やっぱり夢じゃなかったのだとホッとしてる自分がいた。
すぐに立ち上がり、そのまま一階へ降りるとリビングのドアを開けた。
「あ、大丈夫なの?熱」
一人で夕飯を食べようとしていた若菜が心配そうに俺を見ている。
「あいつは?」
「あ、もう帰ったよ」
ニッと笑い、若菜はそう言った。
「つーか、これお前が作ったの?」
野菜炒めに卵焼き、味噌汁もある。
「ううん、作ってくれてたの」
作ってくれてた?
もしかして、あいつが?
「初めてだよね、こういうの」
「えっ?…そうだな」
初めてだった。
何人もこの家に女を連れ込んだことはあったけど。
こういうことをしてくれた奴は、あいつが初めてだった。