恋心
「お兄も食べる?」
「あー、俺は……」
腹は減ってない。
でも…
「うん、食う」
「オッケー。ちょっと待ってね」
若菜はそう言うと、俺の分もすぐに食卓に並べてくれた。
「あ、美味しいーお味噌汁!」
「本当か?」
俺たちはまず味噌汁を飲んだ。
予想してたよりも、普通にうまかった。
「あ!野菜炒めも美味しい」
「うーん、まあまあだな」
野菜炒めもまぁ合格。
何だ、やればできんじゃん。
そう思って、卵焼きに箸を伸ばした時だった。
「あ……これは、味が」
「えっ?」
「味がない」
「ぷっ、マジかよ」
思わず噴き出すように笑ってしまった。
卵焼きに味ないって、あいつまた味付け忘れたのか?
「何か私と同じ匂いがするね」
「ハハッ、カンベンしてくれよ」
若菜の言葉に、わざと顔をひきつらせた。
「でも、嬉しいね、こういうのって」
「そうか?」
フッと笑い、味のしない卵焼きを食べた。
「マジ味しねーな」
不器用だけど。
味はしないけど。
うまかった。
嬉しかった。
あいつの思いやりってやつ?
それが伝わってきて。
すっげーまた、心ん中があったかくなった。