恋心
その夜。
相原の作った夕飯を食べた親父も、卵焼きを食べると若菜と同じことを言った。
「若菜と同じ匂いがするなぁ」と。
「だからカンベンしてくれって」
俺が笑って言うと、親父は目を細めて笑う。
「でもいい子だなぁ。ちゃんと礼言っておいてくれよ?」
「はいはい」
「また連れて来い、俺の休みの日にでも」
「ハハッ何でだよ」
「私もまた会いたい!」
「だから今日はたまたまなんだって」
答えながら、キュッと痛んだ胸。
そうだよ、たまたまなんだ。
歩夢達に頼まれたから、俺の様子を見に来てくれただけで…
それで…
たまたまこういうことをしてくれただけなんだ。
だって俺とあいつは、友達?って関係ほど近くもないし。
だけど顔見知りってほど遠くもない。
微妙な距離のある、同級生って感じで。