恋心



その夜。


相原の作った夕飯を食べた親父も、卵焼きを食べると若菜と同じことを言った。



「若菜と同じ匂いがするなぁ」と。



「だからカンベンしてくれって」


俺が笑って言うと、親父は目を細めて笑う。



「でもいい子だなぁ。ちゃんと礼言っておいてくれよ?」


「はいはい」


「また連れて来い、俺の休みの日にでも」


「ハハッ何でだよ」


「私もまた会いたい!」


「だから今日はたまたまなんだって」



答えながら、キュッと痛んだ胸。


そうだよ、たまたまなんだ。



歩夢達に頼まれたから、俺の様子を見に来てくれただけで…


それで…

たまたまこういうことをしてくれただけなんだ。



だって俺とあいつは、友達?って関係ほど近くもないし。

だけど顔見知りってほど遠くもない。


微妙な距離のある、同級生って感じで。


< 251 / 278 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop