恋心
「メール?見てるけど。つーか、一日に四回も五回も同じメール送ってくんのやめてくんねぇ?」
えっ…?
「何で?先輩が返してくれないからでしょ?電話しても出てくれないし…ずっとあたし、不安だったんだよ?」
言いながら、胸がキュッと締め付けられていく。
「えっ?何言っちゃってんの、俺達別に付き合ってないじゃん」
そして、その言葉を聞いた瞬間、スーッと目が覚めていくような不思議な感覚におそわれた。
付き合ってないじゃん
そうだよ?
付き合ってくれって…言われたわけじゃない。
付き合ったっていう、確かな形はなかった。
だけど…
「でもっ…先輩言ってくれた…好きだって…あたしのこと好きだって言ってくれたでしょ?」
「アハハハッ、修司があんたなんか本気で相手にするわけないでしょ?ちょっと魔がさした浮気、分かる?」
えっ…?
先輩に聞いたのに。
隣にいた女の人に、笑いながらそう言われた。
「っていうか、私が修司の彼女なんだけど。ね?」
「あぁ」
何?
これは、悪い夢なの?
「ごめん、そういうことだから」
だけど、そう言って歩いていく先輩の後ろ姿が、やけにリアルで。
その景色が、一瞬で滲んでいった。