恋心



何なんだよ、

今のニコッっていう笑顔は。



「あれって昼間のあの子だよな?」



隣に座っていたテツが、俺の耳元で小さな声でそう言った。



「ん?そうだっけ?」



首を傾げて適当に返事をしたけど。


また大音量が響きだした部屋で、何度も不適なあの笑顔を思い出した俺は、繋いでいたサラさんの手からゆっくりと手を離して。



「ごめん、ちょっとトイレ」



そう言って部屋から出た。



廊下に出て、周りをキョロキョロ見渡す。

あいつ、どこだ?



ウロウロしながらフロントまで歩いた俺は、なかなか姿を現さないあいつに何だか苛立っていく。




そして。


「あの、店員。高2の店員、どこ行った?」



気付いたらフロントの受付の男にそう聞いてしまってて。



「高2ですか?藤井くんか相原さん、どっちのことでしょうか?」



そして返ってきた言葉にまた苛立ってきて。



「女の方だよ、相原っつーのかあいつ」



そう言った、その瞬間。



「何ですか?相原ですけど」



背後から聞こえてきた声に俺はパッと振り返った。


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