恋心
「ただいま…」
家に帰ると、玄関先で呟いた。
シーンとする部屋。
いつもと変わらない、この感じ。
「はぁっ…」
カバンをポンっとソファーにほおりなげて。
そのままそこへ座り込んだ。
6時か…。
カーテンの隙間からは、まだ明るい空が見える。
そろそろやるか。
座ったものの、すぐに立ち上がり、まっすぐキッチンへ向かう。
冷蔵庫を開けて、ちょっと考える。
うん、そうだな、そうしよう。
そして、いつものように動き出す。
手を洗い、鍋に水を入れて、それに火を付けて。
まな板を出して、玉ねぎを切って。
フライパンを出して…
「ふっ」
そんなことをしていると、何だかふと笑ってしまってた。
めっちゃ手際いいじゃん、俺、って。
慣れたもんだよな…晩飯作るのも。
そう思いながら、味噌汁の味見をしていた時、ガチャっと玄関のドアが開く音がした。
「ただいまー!」
そして、聞こえてくる声に
「おかえりー」と返事をしながら玄関まで歩いていって。
「手洗いうがい、してこいよ」
帰ってきた若菜に、いつものようにそう言った。