恋心
「あーっ…最悪だ…最悪だぁー」
「えっ?何?どうしたの?」
ガクッと肩を落として落ち込む親父に、若菜が近付いていく。
「なかったんだ…ビール…そういや、昨日、調子に乗って四本も飲んじゃったんだよ」
…は?
一瞬、シーンとなって。
「はぁ⁉バカじゃないの!そんなことでいちいち大きな声出したり落ち込まないでよ!」
若菜の呆れた声がキッチンで響いた。
「ハハッ…」
なんかおかしくて。
笑ってしまう俺。
「っていうか一日一本、多くても二本の約束でしょう⁉」
怒った声で、親父を叱る若菜。
「ごめん…つい」
そして、シュンとなって謝る親父。
「まぁまぁ、そう怒るなって。俺ビール買ってきてやるから。風呂入ってこいよ」
「大雅マジか!優しい息子だなぁお前!」
「ったく調子良すぎじゃん、親父。あ、でも買いにいく代わりに漫画買ってもらうから」
「おー、買え買え」
呆れたように笑った親父は、財布をポンと俺に渡すとそのまま風呂へ入っていった。