オトナとコドモの境界線
声からすると女か。
まだ若い……新入生か?
「悪い、大丈夫か?」
「はっはい……あ、あのっ桜里大学ってどこか知りませんか?」
……………コイツ、絶対新入生だ。しかも極度のバカか方向音痴の。
こんな目立つ桜並木のある大学なんてのも珍しいが、そんな大学の道聞いてくるヤツなんかそれよかもっと珍しい。
大学はこの桜並木抜けた先にあんのによ。
あぁ、顔見てやりてぇ。
桜台風が収まりゃあ目開けれんのに全然収まんねぇしよ。
流石に初対面の相手に「お前はバカか方向音痴か?」なんて言う訳にはいかねぇからな。ここは普通に答えるか。
「…桜里大学ならこの桜並木抜けた先だが」
「すいません!ありがとうございますっ」
女はそう言ったかと思うと急に走り出した。
「おいっ、こんな中で走ると…」
危ねぇっつーのに、人の忠告も聞かず女の気配はどんどん遠ざかっていく。
──サァアァァ…
くそ、桜台風め今頃収まりやがった。
空気を読め空気を!もっと前に収まれよ。
「おいコラ!人の話…」
やっと開けた俺の視界に写ったのは……