未熟な天使 *恋と心理学と彼とわたし*

「これで全部だね」



あたし達ふたりしかいない準備室に、辻之内の声が響いた。


ちょっと低くて甘いそれに、心が反応する。



“好き”って想いは単純だね。

無条件に何もかも、愛しく思う。


不安でいっぱいで打ち震えてるくせに。

好きな人から発せられるものに、大好きな人のものってだけで溢れそうになるの。



「このまま、さぼっちゃおっか?」


机の上に置かれた紙の束に手を置いて、辻之内が笑う。


「えっ?」


「でもいまは無理か。俺らがどこにいるかは、みんなが知ってるしね」


「…そうだよ。バレバレだよ」



ねぇ 辻之内、聞いてもいいかな?


ふたりきりになれた、このチャンス。

与えてくれたのが神様かどうかはわかんないけど。


生かしてもいいかな?


こたえてくれる……?
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