未熟な天使 *恋と心理学と彼とわたし*
ピーンポーーン
ドア1枚を隔てた向こう側で、玄関チャイムの音が間延びした。
そして、
シーン
と、訪れた静寂。
……やっぱり帰ろっかな……。
こんな重たいものを抱えたまま、なんだか勢いで走ってきちゃったけど。
熱だして学校休んでるっていうのに、普通そんなタイミングで来ないよね。
本を返すために、なんて。
あたしってば、ただ辻之内の顔が見たかっただけじゃん。
話をするきっかけが欲しかっただけじゃん。
だから返し忘れたこの本を見つけたとき、チャンスのように思っちゃったんだ。
忘れるために避けてたはずなのに。
これじゃあ、ダメだよ。
未練がましい。
とは、こういうこと。