未熟な天使 *恋と心理学と彼とわたし*
もうっ なにをまだ期待してるのよ?


本はまた今度、どうにかして返せばいいよ。



くるっと回れ右をして帰ろうとした、その時。



ガチャッ



背後で鍵の開く音がして、振り向いた。



「辻之内?」



ゆっくりとドアが開かれ、顔を覗かせたその人が身に付けているのは ――


……バスローブ?



「ごめんなさいね。こんな格好だからすぐに出られなくて」



アップにした濡れ髪を巻いたタオルからこぼれる後れ毛が、かなり色っぽい。

切れ長で、潤んだような瞳。

長くて細い手足……



ほら、思ってた通りやっぱり美人 ――



あたしは、目の前に現れた人物に驚くよりも

好きな人の家から、シャワーを浴びてました状態の女性が出てきたことに慌てるよりも


想像以上の彼女の美しさに関心していた。
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