未熟な天使 *恋と心理学と彼とわたし*
……葵か ――


そりゃ、呼び捨てもするよね。

幼なじみなんだし。



「用ってほどのことじゃないんですけど……あの辻之内…くんは?」


探るように視線を向けると、ニッコリと笑顔で返された。

それは、大人の余裕に見えた。


「ごめんね。いまは部屋で寝てるわ」


「そうですか……」



それ以上なにも言えなくて。

やっぱり来るんじゃなかったって思った。


家のなかにはいま、ふたりっきり。

眠ってる辻之内と、シャワーを浴びてた彼女。


熱をだした辻之内の看病しに来たのかな?


それとも、本当は寝てなんていないのかも……。


あたし、なにやってんだろ?

出る幕じゃなかったんだよ。


気付いてよ、もっと早くに。


どうして来ちゃったの?
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