未熟な天使 *恋と心理学と彼とわたし*
「突然、すみませんでした。
あの、あたし、失礼しますっ」


頭を下げて背中を向ける。


「えっ 葵に用があったんじゃないの?」


「いえ。いいんです」


振り向きもせずに答えるのは、かなり失礼な態度だろうけど。

これ以上向き合うのは、辛すぎる。


「さようならっ」


余裕のないあたしは、逃げるように駆けだした。



こっちを見てるか確かめてはいないけど。

彼女の視線が痛かった。


背中に突き刺さるような痛み。

同時に疼くような胸の、痛み。
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