未熟な天使 *恋と心理学と彼とわたし*
横浜 ――



それって、あの日約束した私書箱の鍵を開けに行くということ?


どうしていまさら……って思っちゃう。



ねぇ 辻之内。


辻之内がこうやってまだあたしを誘ってくる理由ってなにかな?


好きな人と再会ができたのに。


それはやっぱり、あれかな。


彼女がもうロンドンへ帰ってしまうからかな。


そういうこと、なの……?



「…時田?」


「ごめん。明日は他に約束があって、あたし行けない。
鍵なら持ってきてるから、あとで返すね。それから借りっぱなしだった本も」


一方的に捲し立てるように話した。


辻之内なんにも言わないけど、どんな顔してるんだろ?


でも顔を見るなんてできないよ。



「黒板、ありがと。体育遅れちゃうから、先行くね?」



あたしは辻之内を一人残して、走って教室を後にした。


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