未熟な天使 *恋と心理学と彼とわたし*

そのまま顔を下へ向けると、十冊以上のアルバムを見つけた。

つまりこの列は、辻之内家の思い出の棚ってとこか。

その内の数冊の背表紙に書いてあるのは、“葵”ともうひとつ──


「……虎太郎?」

「ん? あー、兄貴の名前」


頭の上で声がして驚いて見上げたら、いつの間にか辻之内が隣に立っていた。 


「コタロウなんて誰かと違って男らしい名前だと思わない?」


“誰か”とは、きっと辻之内本人のこと。

確かに彼の名前は、どちらかといえば女の子っぽいかもしれない。

でも中性的とも言えるその響きは、辻之内に合ってるとあたしは思う。

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