未熟な天使 *恋と心理学と彼とわたし*

今さらだけど辻之内って、とっても魅力的な声をしてると思う。適度に低くてそれなりに甘くて。

顔が良いくせに声もなんて、ちょっと、ううん。かなり卑怯じゃない?

だって単に名前を誉められただけなのに、『好きだよ』だなんてフレーズを囁かれたら………しかもこんな距離だし。

少しくらいならうっとりしたり顔を赤くしても、それは必然的な反応であって、あたしはちっとも可笑しくない!と思う。

……でもちょっと、いや、かなり恥ずかしい気分で居心地が悪いかも。


「えっと、あのぉー………そうだ!そ、そろそろレポートに取りかかろっかな」


顔を背けたまま、心理学の本が並ぶ場所へ、いそいそと戻った。

今はとても目を合わせることはできない。そんなことしたら顔から火が出そうだ。

< 75 / 406 >

この作品をシェア

pagetop