僕と黒猫が奏でる音楽
冷たい風をバイクで切る。
着いた先はボロいアパート。
家賃も安く、一人暮らしには丁度いい大きさの部屋。
カンカンと階段を登る音が静かな夜に響く。
部屋の鍵を開けて、ベットに倒れ込む。
昼はカフェで、深夜はコンビニがほとんどの生活。
暇さえあれば、ギターを弾いたり、路上ライブをしたりもするけれど、上京したときとなんら変わりがない気がする。
同じ毎日がただただ過ぎて行く。
「こんなんでいいのかなぁ・・・俺。」
ポツリとひとりつぶやく。
才能ない。
と最近思うようになった。
高校時代はもっと音楽を楽しんでいたのに、上京して変わりばえのない生活を送るようになり、音楽に締め付けられているような気がする・・・。
地元じゃ友人や親戚、誰もが才能があると言うから、舞い上がって上京したけれどそんなに甘いもんじゃないと現実を突きつけられた。
いつになったら俺の夢が叶うのか、誰にもわからない。・・・もしかしたら、叶わないかもしれない。
いや、いまの俺じゃ叶わない。