遠い坂道
「一体どっからそんなの捕まえてくんの?」
若干ひきつり気味の表情で、山梨友美子(やまなしとみこ)は開口一番呟いた。
私は明後日の方向に顔を向けた。だが、それで友美子の追及が止むわけがない。
「毎回毎回……あんたの恋愛に“普通”の文字はないの?」
「おっしゃるとおりでございます、はい」
つい先日、私は三ヶ月付き合った彼氏に浮気され、あげくに別れを宣告された。
別れの理由がこれまたすごい。
――お金貸してくれないから別れる。
私は何か。お前の親か、お財布か。
別れの原因を包み隠さず友美子に告げると、彼女は眉をひそめながらコーヒーを啜った。
ここまでは想定内済みである。
しかし、私の今の彼氏のことを話した途端、友美子の目の色が変わったのは予想外の反応だった。
今の彼氏は定職についておらず、オレは一獲千金を狙うとかナントカ言ってギャンブルに明け暮れている。
……が、まだ二十四歳だから十分更生の余地はある。
今度こそ大丈夫だという想いを込めて、そう伝えたのに……。
友美子は露骨に嫌そうな顔をしてくれた。
「またヒモ属性じゃんか!」
「お待たせしました!」
友美子と店員の声が重なった。
ナイスタイミングとばかりに私は店員へ笑顔を向け、カフェオレを受け取る。
私達は今、駅前にあるカフェの外にあるイスに腰掛けている。そしてかれこれ一時間、友美子の説教が続いていた。
……カフェオレ頼むの、三回目。