遠い坂道
「真琴。これで何人目?」
私は頭の中でこれまで付き合ってきたダメンズたちを数えた。
「十二人……あ、今の彼氏入れたら十三人」
素直に答えると、友美子は腕を組んだ。
「もうそろそろ、顔で選ぶのやめなよ。それが無理なら、せめて中身を吟味してちょうだい」
友美子とは高校時代からの付き合いなので、私が一体どんな恋愛をしてきたかを全て知っている唯一の人物である。
彼女いわく、私は好きになる顔の系統がことごとく一緒らしい。男っぽい骨格で、大きな目。譲れないのは黒髪。
「でもさ、私の好みの顔の人って……いい人多そうなのに、ねえ」
他人事のように言うと、友美子は眉根を寄せて指差してきた。
「あんたは昔っからくじ運がないのっ。高校の時だって、いつも嫌な係にくじ引きで当たってたでしょうが」
「それとこれとは……」
いいや関係ある、と友美子は頑として言った。
「大体、真琴は優し過ぎるんだよ。今回の二股ヒモ男の前は、たしか夢追うナルシストでしょ。有り得ない」
「違う。底なしマイナス男」
私の訂正に友美子はいきなり立ち上がった。彼女の瞳の奥に炎が見える。