遠い坂道


 アッシュグレーの髪は、吹き込むそよ風によって不規則に揺れている。
 鬱陶しい程に長い前髪が何とも言えない色気を醸し出していた。




 顔、めちゃくちゃ小さ……いやいや、そんなことは関係ない。



 一瞬、視線がかち合った。


 廊下側二番目の席に座っている彼は、右手で頬杖をついて心底つまらなそうな顔をして下を向いた。長い睫毛が瞳を覆い隠す。


 荒木君は細身の体を精一杯猫背にしていた。座っていてもわかる……彼はかなり身長が高い。

 長い足は机の下に収まりきっておらず、前に投げ出していた。


 こくりと唾を呑み込んだ。




 ……私が彼のことを忘れるわけがない。




 あの時の少年だ。



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