遠い坂道
しかし、暇である。
私は読みかけの本をバッグから取り出す。
その時、ガラガラと扉が開いた。
え、嘘。来た!
待ちに待った、相談者……もしくは話し相手!
私は本をテーブルに伏せ、衝立から顔を覗かせた。
「………………あれ?」
彼は目を丸くする。大人っぽい雰囲気の彼が年相応の少年に見えた。
寝癖がついたアッシュグレーの髪は艶めいている。若干腫れている目はじっとこちらを凝視していた。
学ランは第一ボタンまで開けており、赤いTシャツが見え隠れする。
潰したカバンをだらしなく肩にかけた少年は、先程まで話題に上っていた荒木美都夜だった。