遠い坂道
……相談コーナーは悩みを持つ生徒達のためにある場所であって、断じて授業に出ない生徒がたむろうための場所ではない。
私はパソコンと向かい合い、眉根に皺を寄せながら考えていた。
チカチカするモニターを凝視していたため、目が乾いた。ちょっと一休みをしようと思い、イスを回して職員室の外を眺める。
桜は既に役目を終え、新緑の季節は目前に迫っている。下校中の生徒達が笑い合いながら横切って行く。
私は弾けんばかりの若さと瑞々しさを感じさせる彼ら彼女らを遠い目で見やる。
何だか、自分が一気に老けこんだ気がした。
去年はこんな気分に陥ったことなどなかった。昨年は教師一年目だったこともあり、自分のことで手いっぱいだったから……他のことに目を向けている余裕がなかったのだ。