これが僕らの愛のかたち 【短編】
最後の展示室で、
僕はやっと彼女に追いついた。


彼女は、
展示ケースのガラスに
頭がくっつくのではないかと思うぐらい
近づいて、

レポート用紙に書かれた
小さな活字を
熱心に読んでいた。


彼女は僕に気がつくと、

「…これ、おもしろいよ?」

と言った。

彼女が熱心に見入っていたのは、

人間の観察レポートだった。


駅前を通る
女性の髪形や服装。
家の中にある
家具や間取り。

公園で昼寝をする
男性の服装。


普段生活していたら、
気にすることなどないものを観察する…。

そのレポートは、
僕らが気がつかない
芸術家の研究成果を
しっかりと伝えていた。
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