【短編】ラーメンよりも君が・・・
そして典子が腕を伸ばした 時、
ビリビリッ!という音が響いた。
典子のブラウスが、右肩のところから破けたのだ。
・・・加齢とともに
ズボンのボタンが飛んだりすることは、
日常の微笑ましい1コマとして経験ある 黒山主任だけれど、
さすがに、ブラウスがビリッと破れたのを見たのは 初めてだった。
「君、大丈夫か?」
瀬戸君がやっと状況に気付いて
机の上を片付け始めた。
耳まで真っ赤になって典子は、「すみません」と謝った。
「どうして君が謝るんだ?悪いのは僕だ」
そんなふたりの後ろから、
不意に 荒い息づかいが聞こえた。
ふたりが そっと後ろを見ると、
黒山主任が 息も絶え絶えに
笑いを噛み殺して震えていた。
「の・・・のっ・・・典子さん・・・だっけ?
・・・だ、大丈・・・ぶっ・・・ぷぷ・・・
ぶぁっはっはっ・・・ひ、ひぃっ・・・」
黒山主任は、堪えきれず 噴き出した。
「あ、はい・・・大丈夫です・・・」
典子の耳元では、マッチが『愚か者』を熱唱。