【短編】ラーメンよりも君が・・・
「これを着て」
瀬戸君が 上着をぶわさぁと典子にかぶせた。
「店まで送っていくよ」
「え、でもラーメンがのびてしまうので・・・」
申し訳なさそうに典子が言った。
「いいんだ。僕が店まで送って行く」
会社を出ていくふたりを見送りながら、
黒山主任は、
「ゆっくりしてこい!仕事は大丈夫だ」と声をかけた。
(ラーメン一筋だった瀬戸君に 恋の女神が。
これこそ、クリスマスイヴの奇跡だな)
安堵した表情で、
黒山主任は残っている仕事に取りかかった。
黒山主任が仕事と戦っている時、
瀬戸君も違うフィールドで戦おうとしていた。