投げた恋ボール
みんなが願う。

1つの勝利を。


「バッター、3番佐藤君。」

アナウンスが拓馬の名前を呼んだ。


“2アウト 満塁”


緊張した、面持ちで拓馬が打席に立つ。


私は知ってる。

拓馬が誰よりも頑張って声を出していたこと。
朝早く来て、1人で素振りをしていたこと。
毎日、夜に走っていたこと。

拓馬なら大丈夫。



私は叫んだ。

「拓馬ーーー!!拓馬ならできるーーッ!!」
≪カッキーーーーーン≫


それは私が叫んだのと、ほぼ同時だった。

ボールとバットが触れた音が、場内に響きわたる。




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