投げた恋ボール
~拓馬SIDE~

梨花は掴んだ腕を離した。

まだ、少しだけ温もりが残る右腕に夏の生温かい風が吹く。


梨花は今まで俺が見てきたどんな梨花よりも、

強い目をしていた。



梨花が走って行く背中を見た。

修学旅行のあの日。
梨花もこんな気持ちで俺の背中を見送ったのだろうか?


俺の決断。

『俺が梨花を幸せにできたなら・・・?』

何度そう思ったことだろう。


でも俺はもう迷わない。


梨花が幸せでいてほしいから。



これでいいんだ。
これが俺の梨花への【愛】だから。








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