シュガー・レス・ノスタルジア
キャンディ・メモリア
カラン
軽快なドアベルの音が、木椅子に腰かけて本を読んでいるアルトに来客を告げた。
ぱたん、と本を閉じ、椅子から立ちあがる。
本日1人目のお客だ。
思い切り息を吸い込むと、朝露で湿った土の匂いがアルトの鼻腔をくすぐった。
カーテンがふわりと風になびき、窓の隙間から隣のエリック爺さんがアルトに向かって手を振っているのが見て取れた。
これから畑にでも行くのだろう。
アルトも笑いながらそれに答え、大きく伸びをしてカウンターへと足を向けた。
今日もまた「キャンディ・メモリア」、店主アルトの忙しい一日が始まる。