悪魔なキミと愛契約


「サラさん」


フランさんは、ルカの肩から手を離し、私の方を向いた。


何だか緊張して、背筋を伸ばす。


「ルカの為に、この世界にやってきてくれて本当にありがとう」


フランさんが深く頭を下げた。


「フランさんっ!!
顔を上げて下さい!! 私はただ、私が思うように行動していただけです。
私はルカの心の教育係としてここに来たけど、正直、教育なんてすごいことは何一つできませんでした。
ただ、ルカを私のわがままで振りまわしていただけです」


大魔王様に頭を下げられ焦りながら言葉を並べると

フランさんは、不意にフっと声をもらし笑った。


「あなたは、とてもチヅルに似ている」


「え?」


「自分の存在の大きさに気づいていないところも、その、焦った時の口調も」


「………」


「それがどれだけ、悪魔心をくすぐるか」


「なっ!?」


最後に思いがけない言葉が出てきて、私は不覚にも赤面。


意味のわからない声を出し、口をパクパクと動かした。


でも……。


「私、チヅルさんにも同じようなことを言われました」


赤面する顔を隠しながら言うと、フランさんの目が瞬く間に丸まった。


「今……何と?」


ああ、そうか。

フランさんは知らないんだ。


私が、チヅルさんに会ったこと。






< 284 / 317 >

この作品をシェア

pagetop